多気山持宝院 庫裡
栃木県宇都宮市
宇都宮市西部多気山の中腹に建つ庫裡のリノベーションである。
既存建物は、玄関からつながる廊下の両脇に諸室が配置され、大きな吹き抜けのある居間・応接コーナーといった表のスペースと厨房・パントリー・食堂・浴室洗面室などの裏のスペースが明確に分離された、いわゆる中廊下形式のプランであった。大正期に多くみられた平面形式であるが、それから50年以上を経てこの考え方が反映され新築されたと想像できる。
住み手である住職はこのプランが明らかに現在の生活に相応しくないことを指摘し、分断された厨房から居間までをひとつながりの空間とすることを望んだ。
既存建物はRC壁式構造で、全ての間仕切り壁がRC造で作られた2階建ての住宅である。住み手の要望を実現するには相当量の壁を取り払う必要があるが、基礎を確認することで耐力壁とそうでない壁を選別し、耐力壁以外のRC壁を撤去し、それらが支持していたスラブをH鋼で補強しながらながらプランニングを進めた。
ひとつながりとなった空間は新旧の仕上げが現れることになるが、それらにはコントラストをつけず、似たような性格の樹種・塗装を用いて緩やかに連続してゆくよう意識した。
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