クロス
敷地周辺は低層の住宅が建ち並ぶ都内の閑静な住宅地だ。敷地北側の前面道路は敷地と接道するあたりでクランクし北側に伸び、40m程先が行き止まりである。この道路に接する数件の住宅へのアクセスとして機能する、通り抜けの無い道路である。
物静かなこの道路を、出来ればプライベートなオープンスペースとして、住宅内部と関係させようと考えた。道路を延長させるように1辺7mの正方形平面を持つボリュームに2層分の吹抜けを貫通させてこの住宅のエントランスとし、この吹抜けに諸室を沿わせた。都内の小さな住宅だけれども、内部にいながら外部に広く意識が伸びて行くことを期待している。
一方で建主は、どこにいても住宅全体の雰囲気が感じとれるような内部空間を希望していた。1-2階の吹抜けと平面的に直行するように2-3階の吹抜けを配し、2階で2つの吹抜けをクロスさせ、これにも諸室を隣接させた。
このクロスした吹抜けを介し、住宅内の各スペースと敷地前面の道路が、様々に関係し合い、それに応じて住人の声や気配も含まれた様々な行為が重層的に重なり合う。常に複数の像が交換され続ける空間を目指した。 |
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